共有物分割の課税科目

複数人で共有している不動産があったとして、この共有状態を解消するには共有物分割手続きをする。共有物分割には次の3つがある。

  1. 不動産そのものを分割する(現物分割)
  2. 不動産を売却し、現金を共有者で分ける(換価分割)
  3. 金銭を支払って取得する(代償分割)

このうち代償分割は移転登記する代わりに金銭を支払う方法で、これを全面的価格賠償という。1人の単独所有にしたり、共有者のうち複数人が他方から移転登記したりと組み合わせは自由である。

さて、ここで取引の性質が問題になる。

移転登記する代わりに金銭を支払うと聞くと、単なる売買ではないかと思われる。しかし本件は共有物分割であって売買ではない。支払う金銭も「代金」とは呼ばない。価格「賠償」である。

共有物分割を提起するということは相手方の持分を収用することに等しく、その補償として賠償金が支払われるという構図になっているのだ。

では共有物分割でどのような税が発生するか。金銭の性質から考えてみる。

支払われる金銭は賠償金ないし補償金であると見做す。この場合、受け取る金銭は不課税となる。資産の毀損分を補填しただけであるため、利益は出ていないと考えるからだ。一方で移転登記を受けた側は支払った賠償金が等価交換物(経費相当)と考えられないため、不動産は贈与となる。従って贈与税が発生する。

次にこの取引を売買と擬制する。この場合、受け取る金銭は対価もしくは代金であり、購入当時の取得費等を差し引いた利益部分に譲渡取得税が発生する。一方で移転登記を受けた側は特に課税項目が無い。(不動産取得税や登録免許税は何れのパターンでも発生する)

不動産登記をする時、同申請書には発生原因を記入する。売買であれば課税項目は一意的であるが、共有物分割の場合はこのように解釈が分かれることがある。