チェルノブイリ原発(RBMK炉)の構造

ソ連が独自に開発したタイプで、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉という。キリル文字表記でРеактор Большой Мощности Канальный(РБМК)、英語表記でReaktor Bolshoy Moshchnosti Kanalnyy(RBMK)である。

特徴は、減速材に黒鉛を、軽水の沸騰冷却、圧力管が挙げられる。蓮根状の黒鉛があり、各穴に圧力管が挿入してあり、ここに核燃料と冷却用軽水が装填される。RBMK式原子炉は各圧力管が独立しているため、運転中に燃料の交換ができる。

チェルノブイリ原発の原子炉では、圧力管が約1700本があった。管数が多いと制御が複雑になるほか、破損事故を起こすと暴走しやすい欠点がある。

原子炉の核分裂反応は、中性子の減速と吸収により制御する。中性子の減速は主に黒鉛が担当する。圧力管は外径8.8cmと細く、核燃料の周りの冷却軽水は量が少ないため、減速効果と吸収効果への寄与が小さい。

軽水は、中性子と衝突しスピードを落として核分裂反応をしやすくする効果がある。原子炉の出力が上がると水温が上昇し、軽水は膨張して密度が小さくなる。したがって減速効果は低下し、核分裂反応も低下して原子炉の出力は下がる。(ボイド効果)

ウラン燃料の温度が上がると、核燃料に含まれる分裂しにくいウラン238中性子を吸収しやすくなる。核分裂しやすいウラン235は反応が減り、原子炉の出力は低下する。(ドップラー効果

RBMK炉の制御は、全体として中性子の吸収効果が大きく作用している。そのため高出力時には制御が比較的容易だが、低出力では不安定状態に陥りやすい。

チェルノブイリ原子力発電所事故

1986年4月26日、旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所4号機で事故が発生、大量の放射性物質が周辺環境に放出された。外部電源が喪失した場合に、タービン発電機の回転により主循環ポンプと非常用炉心冷却系の一部を構成する給水ポンプに電源を供給する能力を調べる特殊な試験をしていた最中、原子炉が不安定状態になった。制御棒を挿入したところ、急激な出力が発生した。原子炉や建屋は破損し、放射性物質や高温の黒鉛が飛散した。