大事を成す情熱の差

永田教授の研究室では、修士課程の院生を取り敢えず海外留学させる。海外の大学はすごい、海外の研究はすごいというイメージを持ってしまっているものだが、自分たちとそんなに変わらないのだということを知って体感して欲しいからだという。

さて、日本では約150年前に明治維新が起こった。薩摩や長州といった地域の出身者が中心となって、現在に至るまでの国家の土台を築き上げた。薩長西郷隆盛伊藤博文大久保利通といった多くの優秀な人材を輩出した。

中国はどうだろうか。約400年にわたり繁栄した漢王朝の礎を築いたのは、初代皇帝でもある高祖劉邦だ。彼は泗水郡沛県の亭長(一定距離ごとに置かれていた宿舎の管理人)であったが、同じく沛県出身の蕭何や曹参、幼なじみの盧綰や樊噲、周勃や夏侯嬰といった者たちと中国大陸を統一した。彼らは建国後も丞相や将軍として支えた。

天下の奇才が偶然にも特定の地域だけに集中して生まれたというのだろうか。そうは考えられない。他の地域にも同等以上の優秀な人材が多くいたはずだ。人の能力に大差はない。違うのは大事を成す情熱の差だけだ。