内生的貨幣供給説の国債発行

今年の大学入試共通テストに、市中銀行の貸出で変化するバランスシートの問題が出された。(ちなみに答えは4番)

f:id:kadekul:20220130224806j:plain

市中銀行が企業に貸出を行うと、同企業の口座残高を増加させる操作をする。つまり貸出と預金は同時に増加する。貸出とは債権であり、市中銀行にとっては資産に該当する。一方で預金(口座)残高は現金を借りることに相当するので負債に該当する。

これを一般に信用創造と言い、銀行の内部的な操作によって貨幣が増加していることから「内生的貨幣供給説」と呼ばれている。

さて、政府が国債を発行した時の貨幣の動きを考えてみる。

政府が新規に国債を発行し、銀行がこれを買い受ける。すると銀行の預金残高(日銀当座預金)が政府名義の同当座預金に振替えられる。政府が公共事業を発注し、これを受注した企業は政府小切手で代金を受取る。企業は銀行に赴き、小切手を差し出して取立を依頼する。銀行は企業の口座残高に小切手分を記帳する一方、小切手を日銀に差し出して政府の当座預金から銀行の当座預金に振替えてもらう。

これによって銀行の資産と負債に国債と預金がそれぞれ増加している。つまり政府が国債を発行すると預金が増えることになる。