引火と発火

東京都江戸川区のマンホール内で爆発が起き、地上付近と内部に一時閉じ込め状態になった作業員の2人が死亡するという痛ましい事件が起きた。マンホール内の老朽化したはしごを交換する作業をしていたという。

東京消防庁の報道によると、事故後のマンホール内には可燃性ガスが充満していたという。何らかの原因でガスに引火した可能性がある。また、その点火源も不明だがあったはずである。

ここでは引火と発火について考えてみたい。

はしごの交換作業を行っていたということで、はしごが鉄製だったことが考えられる。鉄製のはしごが壁面に擦れ、鉄粉が発生すると瞬く間に発火する。これはカイロの原理で、そもそも酸化しやすい鉄が鉄粉になったことで表面積が増大し発火が容易になる。これが火種となりガスに引火した。

またマンホール内には地下24mに排水室があったという。はしごの交換作業とはいうものの、排水設備での作業も含まれていたとすると、火種になるような作業もあったかもしれない。この場合、ガスの引火は容易だったことだろう。

引火とは、可燃性物質に火炎を近づけたときに着火して燃焼すること。引火点はその最低温度のこと。可燃性物質を加熱し、着火するのに必要となる濃度の蒸気を発生する最低温度を指す。

一方で発火とは、物質を加熱して火種がなくとも自ら火を放つこと。発火点はその最低温度のこと。

可燃性ガスは気体であり、一般的に引火点は低い。例えばプロパンは-104度だ。ちなみに発火点は432度である。

鉄粉の発火点は約320度である。はしごと壁面が擦れて摩擦熱が発生すれば発火点を超えてしまうことは十分に考えられる。