次亜塩素酸が弱酸である理由

新型コロナウイルスが蔓延し始めた頃、消毒として次亜塩素酸が話題にのぼった。次亜塩素酸とはどのような物質か。

水に塩素を作用させると次のような化学平衡によって次亜塩素酸を生じる。中~酸性条件下では平衡が左に偏り、次亜塩素酸を生じる反応は進行しない。

\rm{Cl_{2} + H_{2}O ⇄ H^{+} + Cl^{-} + HClO}

さて、次亜塩素酸は水中で電離して次のような平衡状態を生じている。

\rm{HClO ⇄ H^{+} + ClO^{-}}

このときの平衡定数 \rm{K_{\mathrm{a}}}は以下のように表される。

 \rm{K_{\mathrm{a}} = \dfrac{[\mathrm {H^+}][\mathrm {ClO^-}]}{[\mathrm {HClO}]}}

したがって、酸解離定数 \rm{p}K_{\mathrm{a}}は、

 \rm{p}K_{\mathrm{a}} = -log\dfrac{[\mathrm {H^+}][\mathrm {ClO^-}]}{[\mathrm {HClO}]}
 \rm{p}K_{\mathrm{a}} = 7.53

このことから、次亜塩素酸は中~弱酸であることがわかる。

同じ塩素オキソ酸の亜塩素酸( \rm{p}K_{\mathrm{a}}=2.3)、塩素酸(同  \rm-1.0)、過塩素酸(同  \rm-8.6)と比較して分かるように、塩素の酸化数が増加するにつれ誘起効果が増して酸性度が強くなっている。

次亜塩素酸の塩素と酸素に分極はあるものの度合いが小さく、次亜塩素酸イオンとプロトンとの分極も小さいと考えられる。