石平 著, 私はなぜ「中国」を捨てたのか, WAC BUNKO, 2019

中国問題の評論家としてお馴染みの石平氏文化大革命の時代に成都で生まれ、国を想いながらも矛盾に直面し、留学をきっかけに日本に拠点を置きやがて帰化することになる。

彼が幼少の頃に文化大革命が始まり、その影響で両親のもとを離れて祖父に育てられた。祖父は漢方医の知識人だったため、文革の下で密かに論語を教わった。石平少年は国の教育の影響で毛主席の小戦士となるが、祖父が伝えた論語教養が後に開花する。

彼が大学生になった時には民主化運動に情熱を注ぐようになる。国の運営が全て共産党を維持し、党内での権力争いによって国民が犠牲になっていることに気づく。

先に日本に留学していた友人からの招きで自らも留学する決意をした。来日2年目にして勃発した天安門事件をきっかけに、母国と決別する決断をする。

また文革で破壊され尽くしてしまった論語をはじめとする中国古来からの伝統が日本で息づいており、更には日本独自の文化と相まって根付いていることを発見する。

この本を読めば、彼がどんなに日本を愛しているかが分かる。同時に、日本の中に息づいている中国古来の文化をどれほど愛しているかも分かる。誰だって生まれ故郷は尊いものだ。

彼の軽妙な喋りそのものに読みやすい文章で、しかし苦渋の生い立ちが語られている。