花瓶の白い花

ドラマ「魔法のリノベ」の主題歌でもあった、ヨルシカ「チノカテ」という楽曲。ドラマ最終回で「地の糧」であることが判明した。

これはフランスのノーベル文学賞作家のアンドレ・ジッドが1897年に発表した「Les Nourritures terrestres」という作品だ。寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」の元になっている作品でもある。チノカテでも歌詞の一部にインスパイアが見て取れる。

本当はいらなかったものもソファも本も捨てよう・・・町へ出よう

チノカテの歌詞を眺めていると、大きくふたつのパートに分かれているように思う。花瓶の白い花について語る部分と、これから先のことを想像して断捨離と町へ出かける部分のふたつだ。

花瓶の白い花は、過去に関係のあった大切な人のこと。具体的には初めて付き合った人のこと。自分の理想が詰まっていて、とても大事にしていた。しかし大事にしすぎてしまった故に枯らしてしまった。

自分の理想にこだわりすぎていたせいで視野が狭くなっていた。こだわりの一つひとつをソファや本、鞄やペンと言い換えていて、これを断捨離することにした。

本や鞄と言い換えたのは、記憶やモノを保存しておくためのツールだからだと考える。

何でも自分のものにして持って帰ろうとすると難しいものなんだよ。ぼくは見るだけにしてるんだ。そして立ち去るときにはそれを頭の中へしまっておくのさ。そのほうがかばんをうんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからね。

本や鞄で保存することは、大切なモノや記憶を大切にすることの表れである。一方でこの行為は外部保存でもあり、自らの生体記憶領域を占有しないことでもある。大切なものを正面から受け止める覚悟の問題である。