申請に足切りが必要な理由

令和4年4月から、帰化の審査が厳しくなったと言われている。これまでは在留資格1年の者でも帰化許可が下りることもあったが、現在は殆ど可能性がなくなった。

明確な基準というものがあるわけではないが、仮に新基準と言うことにする。新基準ではどのような者なら帰化許可が下りるのか。まず国籍法に記述がある。

第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 十八歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

ここでは6つの条件が記されている。どの条件も基本的なものだ。この他に日常生活レベルの日本語能力も求められる。だが国籍法は古に制定されたものだ。令和4年の基準ではない。

出入国在留管理庁に在留資格の一覧が掲載されている。例えば二の表には興行という項目があり、演劇・演芸・演奏・スポーツ等に係る者はこれに該当する。在留期間には3年・1年・6月・3月又は15日の種類がある。

令和4年4月からは、各項目の最長期間資格を取得している者が帰化許可の下りる可能性の高い者ということだ。なぜそのような基準を設けたのか。 

法務省の資料によれば、帰化申請件数は年間で1万人程度だ。多い時期で平成10年前後の1万7000人だった。直近では減少傾向にあるが、決して減っているわけではないと考える。

この数字は帰化許可申請者数であり、申請はしたものの許可が下りる可能性が低いとされたものは取り下げを助言されるからだ。その者は数字に含まれていない。

申請者が増えすぎてしまったためにある程度の「足切り」が必要になったと考えられる。基準を厳しくすることで名目の申請者が減っているのだ。

これは想像に難くない。全国の法務局で2万人が帰化申請をして、慎重に審査するにあたって法務局員が明らかに不足だ。共通テストよろしく一定の要件を設けることは理解できる。